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韓国の人口減少と外国人労働者政策：日本が学ぶべきこと

少子高齢化が進む日本と同様に、お隣の韓国も深刻な人口減少に直面しています。日本が技能実習や特定技能といった制度で外国人労働力の確保に力を入れていることは、皆さんもご存知の通りでしょう。では、韓国はどのような対策を講じてきたのでしょうか？この記事では、韓国の外国人労働者政策を日本と比較しながら、その実態、問題点、そして日本が学ぶべき点について、わかりやすく解説していきます。世界的な人材獲得競争が激化する中、韓国の事例は、日本の外国人雇用戦略に新たな視点をもたらしてくれるはずです。

1. 韓国の人口減少の現状と、外国人労働者受け入れの背景

韓国の人口減少は、日本以上に深刻です。合計特殊出生率（一人の女性が生涯に産む子供の数）は、2023年には0.8人を下回り、OECD加盟国の中でも最低レベルです。これは、将来的に労働力人口が大幅に減少することを意味します。
例えるなら、毎年、運動会のリレー選手がどんどん減っていくようなものです。これでは、経済というチーム全体の競争力が落ちてしまいますよね。
このような状況を受け、韓国政府は1990年代から外国人労働者の受け入れを積極的に進めてきました。当初は、製造業など、いわゆる「3K」（きつい、汚い、危険）と呼ばれる職場の人手不足を補うことが主な目的でした。

2. 韓国の外国人労働者政策の変遷：雇用許可制（EPS）の導入

韓国の外国人労働者政策の大きな転換点となったのが、2004年に導入された「雇用許可制（Employment Permit System、EPS）」です。
これは、政府が直接、外国人労働者の選抜、入国、就労支援などを管理する制度です。
雇用許可制(EPS)を導入する前は、日本の技能実習制度に似た「産業研修生制度」がありましたが、
この制度は、研修生という名目で低賃金労働を強いるなどの問題点が指摘されていました。
EPSの導入により、外国人労働者の人権保護が強化され、労働条件も改善されました。
また、政府が仲介することで、悪質なブローカーの排除にもつながりました。
例えるなら、国が信頼できる「職業紹介所」を運営し、外国人労働者と企業をマッチングするようなものです。

3. 日本と韓国の外国人労働者政策の比較：制度の違いと特徴

日本の技能実習制度や特定技能制度と、韓国の雇用許可制（EPS）を比較してみましょう。

• 制度の目的:
  • 日本：技能実習は「国際貢献」、特定技能は「人手不足解消」が建前。
  • 韓国：EPSは明確に「労働力不足の解消」を目的としている。
• 選抜方法:
  • 日本：技能実習は民間（監理団体など）が主体、特定技能は企業が直接雇用。
  • 韓国：EPSは政府（韓国産業人力公団）が一元的に管理。
• 労働者の権利保護:
  • 日本：技能実習制度では、転職の自由が制限されるなどの問題点が指摘されている。
  • 韓国：EPSでは、労働関係法令が韓国人と同等に適用され、転職の自由も一定程度認められている。

このように、制度の目的、選抜方法、労働者の権利保護などの面で、日本と韓国には大きな違いがあります。

4. 韓国の外国人労働者政策の問題点と課題：今後の展望

韓国の雇用許可制（EPS）は、日本の制度と比較して、労働者の権利保護の面で進んでいると言えます。
しかし、EPSにも問題点がないわけではありません。
例えば、受け入れ可能な業種が限定されているため、サービス業など、人手不足が深刻な他の業種では、外国人労働者を十分に活用できていません。
また、EPSの対象となるのは、主に非熟練労働者であり、高度な技能を持つ人材の受け入れは、別の制度（専門職ビザなど）に頼らざるを得ません。
世界的に高度人材の獲得競争が激化する中、韓国も、より多様な外国人材を受け入れるための制度改革が求められています。

近年、韓国政府は、

• 熟練技能を持つ外国人労働者の長期滞在を可能にする制度
• 地方の人口減少対策として、特定の地域での就労を促す制度

などを導入し始めています。
また、外国人労働者だけでなく、その家族の受け入れや社会統合にも力を入れ始めています。

5. 韓国の事例から日本が学べること：外国人労働者政策への示唆

韓国の外国人労働者政策から、日本が学べることは多くあります。

1. 明確な目的設定:

   外国人労働者政策は、単なる「人手不足解消」の手段ではなく、国の経済・社会の将来を見据えた上で、明確な目的と戦略を持つべきです。

2. 政府の積極的な関与:

   外国人労働者の選抜、入国、就労支援、生活支援などを、政府が積極的に関与することで、悪質なブローカーを排除し、労働者の権利保護を強化できます。

3. 多様な人材の受け入れ:

   非熟練労働者だけでなく、高度な技能を持つ人材や、特定の地域で働く意思のある人材など、多様な外国人材を受け入れるための制度を整備する必要があります。

4. 社会統合の推進:

   外国人労働者とその家族が、地域社会の一員として安心して暮らせるよう、言語教育、文化交流、生活相談などの支援体制を充実させる必要があります。

まとめ：外国人労働者政策、未来への投資

韓国の外国人労働者受け入れ政策は、人口減少という共通の課題に直面する日本にとって、多くの示唆を与えてくれます。
雇用許可制（EPS）は、外国人労働者の権利保護の観点から見れば、日本の制度よりも進んでいる部分があります。
外国人労働者を「安価な労働力」としてではなく、「共に社会を支える仲間」として迎え入れる。そのための制度設計と、社会全体の意識改革。これこそが、日本が韓国から学ぶべき最も重要な教訓と言えるでしょう。
外国人労働者政策は、単なる労働力不足対策ではなく、日本の未来を形作る「投資」であるという認識が必要です。